「最近あの人、来てないな」と気づいたときには、たいてい何か月か経っています。
はっきりした出来事があったわけではない。揉めたわけでも、苦情を言われたわけでもない。ただ、来なくなった。理由を聞く機会もないまま、記憶から薄れていきます。
不満を口に出す客は、実はまだ関係が続いています。言うだけの関係があるということだからです。黙って離れる客のほうが、戻ってくる可能性は低い。
理由は、小さくて言いづらいことが多い
なぜ何も言わないのか。言うほどのことではないと本人が思っているからです。
席が奥だった。担当が別の席から戻ってこなかった。頼んだものが遅かった。名前を間違えられた。どれも、わざわざ苦情にするようなことではありません。その場では笑って済ませられる程度のことです。
ただ、こうしたことが何度か重なると、足が遠のきます。決定的な出来事がないので、本人も「なんとなく行かなくなった」としか説明できない。だから聞いても出てこないし、聞く機会自体がありません。
店側からすると、何が起きたのかまったく見えないまま、客が減っていくことになります。
頻度の変化には、前触れがある
とはいえ、完全に予兆がないわけではありません。
離れる前には、たいてい間隔が空き始めます。週1回だったのが2週に1回になり、月1回になり、止まる。この途中の段階なら、まだ関係は生きています。
問題は、この変化が記憶に残らないことです。来店の間隔が少しずつ空いていくのは、日々の営業のなかでは目立ちません。今日来なかったことは、明日来るかもしれない以上、異常には見えない。
ここは、記録があるかどうかで差が出ます。Luna Pos のような POS で会計に顧客が紐づいていれば、最後の来店からの日数は自然に残ります。「前回から何日空いているか」で並べれば、離れかけている人が上に来る。記憶では拾えない層が、ここで見えます。
「久しぶり」を言うタイミング
離れかけている人に気づいたとして、何をするか。
まず、店に来たときの対応が変わります。3か月ぶりに来た人に「お久しぶりです」と言えるかどうか。ここで前回の話が出てくると、覚えられていたという事実が伝わります。逆に、初めての客のように扱われると、その日で終わることがあります。
記録があると、この対応ができます。前回いつ来たか、誰が担当だったか、何を飲んでいたか。全部を覚えている必要はなく、見られる状態にあればいい。
連絡を入れる場合も同じです。誰にでも同じ文面を送るのではなく、その人の状況に合わせた内容にできるかどうか。前回から半年空いている人と、2週間空いている人に、同じ連絡をしても噛み合いません。
全員を追いかけなくていい
ただし、離れた客をすべて呼び戻そうとするのは、現実的ではありません。
生活が変わった、転勤した、そもそも一度きりのつもりだった。こういう離脱は、店側が何をしても変わりません。ここに労力をかけると、今来ている客への手が薄くなります。
見るべきは、頻繁に来ていたのに止まった人です。関係が続いていたということは、戻る余地もあるということだからです。回数の多かった人から順に確認していけば、優先順位はそう難しくありません。
離脱は、業態としての前提
ナイトの業態では、客が入れ替わるのは当たり前です。全員が何年も通い続けることはありません。
だから、離脱そのものをなくそうとするより、離脱に気づける状態を作るほうが現実的だと思います。気づければ、まだ手が打てる段階の人が拾える。気づけなければ、静かに減っていくだけになります。
秋から年末にかけては、来店の理由が増える時期です。誘えば戻る人が、一年でいちばん多い。夏の間に離れかけた人に声をかけるなら、今がその時期にあたります。
黙って消えた客は、黙って戻ってくることもあります。ただ、そのきっかけは、たいてい店側が作るものです。