体験入店の日は、たいてい上手くいきます。
みんなが気にかけ、席にもつけ、それなりに楽しかったと言って帰る。ところが次の出勤の連絡が来ない。あるいは1回だけ来て、そこから音信不通になる。
新人が辞めるタイミングは、実はかなり偏っています。半年後でも3か月後でもなく、最初の2〜3回の出勤の前後に集中している。ここを乗り越えた子は、その後しばらく続くことが多い。だとすれば、力を入れるべき場所もはっきりします。
体験の日だけ、世界が違う
なぜ最初でつまずくのか。ひとつは、体験入店の日と、その後の日で、店の様子がまるで違うからです。
体験の日は、店側が意識して手をかけます。誰かが横についてくれる。困っていたら助けが入る。空いている席に案内される。本人からすれば「これなら自分にもできそうだ」と感じて帰ることになります。
問題は2回目です。もう新人ではあるけれど、体験ほどの手厚さはない。周りは通常営業に戻っていて、それぞれ自分の仕事をしている。ここで、体験の日に見えていた景色との落差が来ます。
「話が違う」と感じるわけではありません。ただ、思っていたより一人だった、という感覚が残る。この感覚が、次の出勤への足を重くします。
誰の担当でもない時間ができる
もうひとつ、構造的な問題があります。
新人が入ったとき、教える人が決まっていない店は案外多い。手が空いた人がなんとなく面倒を見る、という形になりがちです。これは一見柔軟ですが、忙しくなると誰も見ていない状態が発生します。
新人からすると、誰に聞けばいいかわからない時間ができる。オーダーの通し方、伝票の書き方、休憩のタイミング。聞けば済むことでも、聞く相手が定まっていないと、聞くこと自体のハードルが上がります。何度か聞きそびれると、「自分はここでは邪魔なのかもしれない」という方向に解釈が傾いていきます。
担当を1人決めておくだけで、この状況はかなり変わります。その日ずっと張り付く必要はありません。「困ったらこの人に聞けばいい」という宛先が決まっていることが大事で、実際に聞く回数は多くなくてもいい。
最初の給料までが遠い
お金の話も、辞める理由として大きいものです。
日払いのある店なら別ですが、給料日が月末締めの翌月払いだと、最初の出勤から給料まで1か月以上空くことがあります。生活のために働き始めた子にとって、この期間は長い。
さらに、いくらもらえるのかがはっきりしないまま働いていると、不安は強まります。時給は聞いていても、指名がついたときの計算、同伴の扱い、遅刻や早退の控除。このあたりが曖昧なままだと、「思っていた額と違うかもしれない」という疑いが残り続けます。
ここは、説明の仕方で改善できる部分です。時給いくら、指名がつくといくら、今日の分はいくらになるのか。数字が本人に見えていれば、少なくとも金額への不信は生まれません。
Luna Pos のような POS で日々の指名や売上が記録されていれば、その日の実績を本人に示すことができます。締め日にまとめて計算するのではなく、その都度見えている状態にしておく。金額そのものより、わからないことが減るのが大きい。
「合わない」の中身を分けて考える
辞めた子から理由を聞くと、たいてい「合わなかった」と返ってきます。この言葉だけでは何も改善できません。
実際には、いくつか違うものが混ざっています。仕事の内容が想像と違った。人間関係で居づらかった。時間帯が生活に合わなかった。稼げる見込みが立たなかった。それぞれ、店ができることが変わります。
生活リズムの問題なら、シフトの調整で残れることがあります。金額の見込みなら、説明のしかたで変わる余地がある。一方で、この仕事自体が向いていない場合もあって、それは無理に引き止めるものではありません。
分けて考えないまま「最近の子はすぐ辞める」で片付けると、直せたはずのものまで直せなくなります。
3回目までを設計する
やることは、そう複雑ではありません。
最初の3回の出勤について、誰が見るか、何を教えるか、どこまでできれば十分かを決めておく。全部を一度に教えようとせず、初日はこれ、2回目はここまで、と区切る。できたことは、その場で言葉にして伝える。
新人にとって、自分が上達しているかどうかは自分では見えません。「先週より場が持つようになった」と誰かが言ってくれて、初めてわかる。この一言があるかないかで、次の出勤への気持ちはずいぶん変わります。
秋から冬にかけては人が動く時期で、新しく入ってくる子も増えます。10月以降に戦力になってもらうつもりなら、最初の数回をどう扱うかを、今のうちに決めておく価値はあります。
辞める理由の多くは、入った直後にできています。