「キャバクラって、あと何年もつと思う?」
飲みの席で聞かれた。AIが接客する時代が来たら終わりじゃないか。VRで十分じゃないか。そもそも若い子はキャバクラに行かないだろう。——よく聞く論理だ。
結論を先に言う。キャバクラは10年後も存在している。ただし、今と同じ形ではない。
映画館はまだ存在している
1950年代、テレビが普及したとき「映画館は消える」と言われた。家で映像が見られるのに、わざわざ外に出て金を払う理由がない、と。
70年以上経って、映画館はまだある。
VHSが普及したときも「消える」と言われた。DVDのときも。Netflixのときも。毎回「今度こそ終わりだ」と言われて、毎回生き残った。
なぜか。映画館が売っているのは「映像」ではなく「体験」だからだ。大きなスクリーン、暗い空間、周りの観客の反応、ポップコーンの匂い。これは家では再現できない。映像の質だけなら家のテレビで十分だが、「あの場所にいること」の価値は代替できなかった。
キャバクラも同じ構造だ。
「会話」は代替できても「場」は代替できない
AIの進化で、会話の相手はいくらでも見つかるようになる。ChatGPTに話し相手になってもらえる。AIキャラクターと24時間チャットできる。音声通話もできるし、そのうちビデオ通話もできるようになるだろう。
でも、あの空間は再現できない。
薄暗い照明。お酒の香り。ドレスを着た女性が隣に座る。目が合う。グラスを傾ける。BGMが流れている。隣のテーブルが盛り上がっている。ボーイが「お飲み物いかがですか」と聞いてくる。
この「身体ごとその場にいる」体験は、どんなにテクノロジーが進んでも、画面の向こうからは得られない。人間は五感の全てで空間を体験する。視覚と聴覚だけを再現しても、残り三つが欠けている。
水商売の歴史——400年変わらない「夜の接客」の本質で書いたように、「夜、誰かと飲みたい」という欲求は何百年も変わっていない。技術が変わっても、人間の身体は変わらない。
10年前に「消える」と言われた業態の話
少し振り返ってみる。
レンタルビデオ店 — 消えた。Netflixとサブスクに置き換わった。物理的な「モノの受け渡し」が本質だったから、デジタルで完全に代替された。
書店 — 減ったが消えていない。Amazonが本を売るようになっても、「本屋で偶然出会う」体験はネットでは得られない。蔦屋書店のように「空間としての書店」にシフトした店は生き残っている。
映画館 — 前述の通り、生き残った。「映像」ではなく「体験」を売っているから。
ライブハウス — コロナで一時壊滅的だったが、復活した。配信ライブは定着しなかった。「その場にいること」に価値があるから。
共通する法則がある。「モノ」を売っていた業態は代替される。「体験」を売っていた業態は残る。
キャバクラは「モノ」を売っているか? お酒を売っている、と言えばモノだ。でも本質はそこではない。「あの空間で、あの人と過ごす時間」を売っている。これは体験だ。
推し活とマッチングアプリは「競合」か
「若い人はVTuberに投げ銭するからキャバクラに来ない」「マッチングアプリで会えるから金を払って女性と話す必要がない」——この手の議論は多い。
半分正しくて、半分間違っている。
Z世代はキャバクラに来ない——のか?で書いたが、若い世代の「夜の楽しみ方」が変わっているのは事実だ。でも「人と会って、お酒を飲んで、話す」という行為自体をやめたわけではない。やる場所と形が多様化しただけだ。
推し活とキャバクラは、似ているようで全然違う。推し活は「一方的に応援する」関係。キャバクラは「双方向の会話」がある関係。推し活で満足する人がキャバクラに来なくなった、ということはあるかもしれない。でもそういう人は、もともとキャバクラに「双方向の会話」を求めていなかった可能性がある。
マッチングアプリも同じだ。マッチングアプリは「出会い」のツール。キャバクラは「出会い」の場ではない(法律的にも)。お客さんがキャバクラに求めているのは、「今夜この時間を、心地よい会話で満たすこと」であって、「恋人を見つけること」ではない(例外はある)。
つまり、推し活もマッチングアプリも、キャバクラの直接的な競合ではない。可処分時間と可処分所得を奪い合っているという意味では競合だが、提供している体験は違う。
変わるもの、変わらないもの
10年後のキャバクラは、今とは違う形になっているだろう。何が変わって、何が変わらないか。
変わるもの:
- 集客の方法。 SNSやオンラインでの導線が主流になる。紹介とキャッチだけで回す時代は終わる
- 会計・管理の方法。 紙の伝票は消える。「DX」という言葉が一番似合わない業界で、何が変わっているかで書いたが、バックオフィスのデジタル化は確実に進む
- 客層。 団体でワイワイ飲む需要は減り、1〜2人で静かに飲む需要が増える。客単価の二極化が進む
- キャストの働き方。 副業として短時間だけ出勤する形態が増える。「週5でフルタイム」は減る
- 透明性。 料金体系、キャストの給与体系、店の経営状態。全てが今よりオープンになる。ならざるを得ない
変わらないもの:
- 「夜、誰かと飲みたい」という欲求。 これは人間の根源的な欲求だ。テクノロジーでは代替できない
- 「目の前の人と、今この瞬間を共有する」体験。 リモートでは得られない。身体性がある
- 「非日常の空間に身を置く」快感。 薄暗い照明、ドレス、お酒、音楽。日常とは違う世界に入る体験
- 「自分を特別扱いしてもらえる」喜び。 人間は承認欲求から逃れられない
消える店と残る店
10年後もキャバクラは存在する。でも、全ての店が残るわけではない。
消えるのは「今のやり方を変えない店」だ。紙の伝票のまま、キャッチだけに頼り、キャストの離職率が高くても次を入れればいいと考え、データを一切取らない店。
残るのは「変わるものを変えて、変わらないものを守る店」だ。テクノロジーを使って効率化するところはして、浮いたリソースを「お客さんの体験の質」に投下する。集客はデジタルで、接客はアナログで。この使い分けができる店が生き残る。
キャバクラは消えない。でも、「今のキャバクラ」のまま残るわけでもない。
形は変わる。客層も変わる。働き方も変わる。でも「夜、誰かと飲みたい」という人間の欲求が消えない限り、それに応える場所は必要とされ続ける。
問うべきは「キャバクラは存在しているか」ではなく、「10年後も選ばれる店を、今から作れているか」だ。
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