8月は暇だ。ニッパチと呼ばれる閑散期で、放っておくと客足が遠のく。
だから「暇な時期こそ、自分から連絡を」とよく言われる。これは正しい。何もしなければお客さんは来ないし、こちらから接点を作らないと、忘れられていく。
でも、ここで多くの人がつまずく。連絡しなきゃと焦って、「今日出勤してます、暇なんで来てください」を毎日のように送ってしまう。すると、どうなるか。お客さんは、だんだん既読をつけなくなる。
連絡の量を増やせば来てくれる、という話ではないのだ。むしろ8月の営業LINEは、頻度より距離感の問題だと思う。
「来てください」は、相手を動かす言葉ではない
「今日暇なんで来てください」が効きにくいのは、それが完全にこちら都合の言葉だからだ。
お客さんからすれば、自分が来る理由ではなく、店が客を欲しがっている事情を伝えられているだけになる。「暇」という言葉は特によくない。「人気がない店」「売れていないキャスト」という印象を、こちらから差し出してしまう。
人が動くのは、誰かに必要とされているからではなく、自分にとって行く意味があるからだ。だから連絡で伝えるべきは「こっちが暇だから来てほしい」ではなく、「あなたに来てほしい理由」や「あなたと話したいこと」のほうになる。
たとえば、前に話した話題の続き。「この前言ってた映画、観ましたよ」。たとえば、相手を思い出したという事実。「さっき◯◯の話してて、◯◯さんのこと思い出しました」。営業の匂いが薄く、相手が主役になっている連絡は、返信されやすい。
送るなら、タイミングを選ぶ
同じ内容でも、いつ送るかで反応は変わる。
返信が来やすいのは、お客さんに余白がある時間だと言われる。朝の通勤中、昼休み、仕事が終わる少し前。逆に、仕事に集中している時間や、深夜に送っても、流されやすい。
これは相手の生活リズムを知っているほど精度が上がる。会社員なのか、自営なのか、夜型なのか。普段の会話で「何時くらいまで仕事なんですか」と知っていれば、その人に合わせて送れる。一斉に同じ時間に全員へ送るより、一人ひとりのリズムに合わせたほうが、ずっと届く。
全員に同じ連絡をしない
8月にやりがちなのが、登録している全員に同じ文面を一斉送信することだ。気持ちは分かる。一人ずつ書くのは大変だし、暇な時期は焦る。
でも、一斉送信は伝わってしまう。「あ、これ全員に送ってるやつだ」と。コピペの「久しぶり!元気?」は、相手の中で「自分宛て」にならない。
ここで効いてくるのが、お客さんを覚えているかどうかだ。最後に会ったのはいつか、何を話したか、どんなお酒を飲む人か。それが分かっていれば、一人ひとりに少しずつ違う、その人だけの連絡が書ける。
とはいえ、何十人もの最後の来店日や会話を全部記憶するのは難しい。だから、来店履歴やお客さんの情報が記録に残っていると助かる。「前回から1ヶ月空いている人」「よくこのボトルを入れる人」が分かれば、誰に、どんな入り口で連絡すればいいかが見えてくる。Luna Pos のような POS でお客さんと来店が紐づいていれば、記憶に頼らず「そろそろ連絡したい相手」を見つけやすくなる。
季節は、自然な連絡の口実になる
営業っぽさを消したいなら、季節の話題は使いやすい。
「暑いですね、夏バテしてないですか」「お盆はどこか行きました?」。こういう連絡は、用件がないのに連絡する不自然さを、季節がうまく隠してくれる。相手を気遣う言葉から入って、返事が来たら自然に会話が続く。その流れの中で、来店の話がふっと出てくるくらいが、ちょうどいい。
8月は、暑さもお盆も夏祭りも、口実になる材料が多い。「来てください」と言わずに、来たくなる接点を作る。そのための季節だと考えると、閑散期の連絡も少し気が楽になる。
連絡しない勇気も、ときには要る
最後にひとつ。連絡は、しすぎないことも大事だ。
毎日のように連絡が来ると、お客さんは「またか」と思う。特別なはずの一通が、日常のノイズに埋もれる。たまに、絶妙なタイミングで届く一通のほうが、ずっと効く。
8月は焦る時期だ。暇だと、つい連絡の量で埋めたくなる。でも、量で押すほどお客さんは引いていく。送る相手を選び、タイミングを選び、その人だけの言葉を選ぶ。数を減らして、一通の質を上げる。閑散期の連絡は、たぶんそういう引き算のほうがうまくいく。
「来てください」と百回送るか、「あなたを思い出しました」と一回送るか。
同じ閑散期でも、その一通の重さで、夏の終わりは変わってくる。
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