「最近の若い子はキャバクラに来ないよね」
この言葉、どの店でも聞く。業界メディアでも「若者のキャバクラ離れ」は定番のテーマになっている。2024年上半期のキャバクラ倒産件数は前年同期比150%増で過去最多を更新した(東京商工リサーチ調べ)。数字だけ見れば「衰退」に見える。
でも、ちょっと立ち止まって考えたい。
「来ない」と「知らない」と「入口がない」は、全然違う問題だ。そしてこの3つを混ぜたまま「若者離れ」と呼んでしまうと、打つ手も見えなくなる。
「行かない」のか、「知らない」のか、「入口がない」のか
まず整理してみる。
「行かない」 は、知っていて、機会もあって、それでも選ばないこと。「お金を払って気を遣うのは無理」「疑似恋愛に興味がない」——これは価値観の問題で、変えるのは難しい。
「知らない」 は、そもそもキャバクラがどんな場所か体験したことがないこと。企業接待が減って「上司に連れて行かれる」という入口がほぼ消えた今、これは想像以上に多い。知らないから「行かない」のか、知った上で「行かない」のか。この区別は大きい。
「入口がない」 は、興味はあるかもしれないけど、最初の一歩が踏み出せないこと。料金がわからない、システムがわからない、一人で行く勇気がない、そもそもどの店がいいかわからない。
Z世代の「キャバクラ離れ」と言われているものの中には、実は「知らない」と「入口がない」がかなり混ざっている。これは「離れ」ではなく「出会えていない」だ。
TikTokでキャバクラが「再発見」されている
面白い現象がある。
TikTokでキャバクラ関連のコンテンツが伸びている。キャスト紹介やシャンパンコールの動画だけじゃない。「キャバクラってこんな感じなんだ」という、いわば文化紹介としてのコンテンツが若い層に届いている。
実際に、TikTok運用を始めた店舗で応募数が2ヶ月で3倍に増えた事例もある。これは「働く側」の話だけど、「見る側」にも同じことが言える。知らなかったものが動画で可視化されて、「意外と楽しそう」「思ってたのと違う」という反応が生まれている。
ポイントは、TikTokが「キャバクラを知らない層」に届いているということ。テレビやグルメサイトでは届かなかった層に、ショート動画というフォーマットが刺さっている。実はこういった動きは、ナイト業界で「DX」と呼ばれていないだけで進んでいるデジタル化のひとつでもある。
これは「若者がキャバクラに戻ってきた」という話ではない。**「初めて知った」**という話だ。離れる以前に、出会っていなかった人たちが、初めてキャバクラという文化に触れている。
ボウリング場が教えてくれること
少し視点を変えて、他の業界を見てみる。
ボウリング場もかつて「若者離れ」と言われた。レジャーの選択肢が増え、ボウリング人口は長期的に減少していた。でもラウンドワンは、ボウリングを「スポーツ」から「体験型エンターテインメント」に再定義した。
投げ放題プランで価格のハードルを下げ、友達同士のグループ遊びとして提案し、リモート対戦のような新しい仕組みも入れた。結果、「ボウリングなんて古い」と思っていた層が「ラウンドワンに遊びに行く」と言い始めた。
注目すべきは、ボウリングの中身自体はほとんど変わっていないこと。変わったのは「入口」と「見せ方」と「体験の枠組み」だ。
キャバクラに置き換えてみると、どうだろう。
「来ない」を前提にした店づくり vs 「来させる」を前提にした店づくり
「Z世代は来ない」を前提にすると、打ち手はこうなる。
- 既存の30〜50代の客単価を上げる
- 法人接待の残りを拾う
- 「来る人だけ来ればいい」と割り切る
これは間違いではない。「客を選ぶ店」が結局いちばん長く続くという考え方は確かにある。無理にターゲットを広げて店のカラーが崩れるくらいなら、今の客層を大切にした方がいい。
一方で、「来させる」を前提にすると、発想が変わる。
- 料金やシステムを事前にわかるようにする(価格不明の店に若者は入らない)
- 初回のハードルを下げる仕組みをつくる(申告制の人生初割引・紹介割引のような設計が有効だ)
- SNSで「どんな場所か」を可視化する(TikTok、Instagram)
- イベントで「きっかけ」をつくる(バースデーイベントのような特別な夜は、初来店の口実になる)
- キャストの魅力を「中の人」として発信する(会いに行ける人としてのブランディング)
どちらが正解かではなく、自分の店がどちらの戦略を取るのかを意識的に選んでいるかどうかが重要だ。
「若者」をひとくくりにしない
もうひとつ大切なのは、Z世代といっても一枚岩じゃないということ。
確かにアルコール離れや健康志向は統計的な事実だ。でも全員が飲まないわけじゃないし、全員が「体験より効率」で生きているわけでもない。推し活に何万円も使う若者がいて、アニメコラボカフェに行列をつくる若者がいて、ホストクラブに通う若者もいる。
コンカフェに客を取られているのか?という議論も以前書いたけど、コンカフェが伸びているのは「若者が夜の店を避けている」からではなく、むしろ「入口のハードルが低い場所に若者が流れている」ということでもある。
つまり、「対面で人と過ごす時間にお金を払う」こと自体が否定されているわけではない。 ただ、その入口の形が変わっているだけだ。同じロジックは女性客の開拓にも当てはまる。「来ない」のではなく「入口がない」だけかもしれない。
キャストが集まる店は、客も集まる
もうひとつ見落とされがちな視点がある。Z世代の「働く側」の動向だ。
ラウンジバイトが若い女性に人気なのは、「私服OK」「ノルマなし」「自由シフト」といった働きやすさが理由だ。逆に言えば、キャバクラが「働く場所」として選ばれなくなれば、キャストの質と量が下がり、結果として客も離れる。
キャストが集まる店と集まらない店の違いでも触れたけど、「いいキャストがいるから客が来る」と「いい店だからキャストが来る」は表裏一体だ。若い世代にとって魅力的な職場環境をつくることは、間接的に若い客層を呼び込むことにもつながる。
まとめ
- 「Z世代のキャバクラ離れ」の中身は「行かない」「知らない」「入口がない」の3つが混在している
- TikTokで「初めてキャバクラを知る」若者が増えている——これは「離れ」ではなく「出会い」
- ボウリング場のように、中身を変えなくても「入口」と「見せ方」を変えることで新しい層に届いた事例がある
- 「来ない前提」と「来させる前提」のどちらの戦略を取るか、意識的に選ぶことが大事
- Z世代は一枚岩ではない。「対面の時間にお金を払う」こと自体は否定されていない
- 「働く側」のZ世代が集まる環境をつくることが、「遊ぶ側」のZ世代を呼び込む入口にもなる
Luna Pos で日々の業務をスマートに
Luna Pos は、キャバクラ・ラウンジのために作られたクラウド POS です。
来店データ・客層の変化・新規とリピートの比率——数字で見えるようになると、「なんとなく減った」ではなく「どこが変わったか」がわかるようになります。
新しい客層にアプローチするにも、まず今の状態を正しく把握することから。