キャバクラを開こうとすると、まず最初にぶつかるのが「何の許可がいるのか」という壁だ。
調べると「飲食店営業許可」「風俗営業許可」「食品衛生責任者」といった言葉が出てきて、それぞれに申請先も期間も違う。しかも厄介なのは、これらに順番があることだ。先に取っておかないと次に進めないものがあり、知らずに進めると、最後の最後で「これがないと申請できません」と止まってしまう。
ここでは、開業に必要な許可・届出を、取る順番に沿って一本の線で整理してみたい。細かい要件は地域や物件で変わるので、最終的には行政書士など専門家に確認するのが確実だけど、まず全体像を掴むための地図として読んでもらえたらと思う。
全体像——大きく分けて3つ
キャバクラの開業で必要になる主なものは、大きく3つだ。
- 食品衛生責任者(資格)
- 飲食店営業許可(保健所)
- 風俗営業許可・1号(公安委員会=警察)
このうち、接待を伴う営業——お客さんの隣に座ってお酌をしたり、談笑したりする営業——には、3番目の風俗営業許可が必ずいる。これがキャバクラを他の飲食店と分ける一番大事な許可だ。そして、この許可を取るには2番目の飲食店営業許可が前提になり、その飲食店営業許可を取るには1番目の食品衛生責任者がいる。つまり、1→2→3の順に積み上がっている。
順番を意識せずに動くと、たとえば物件を借りて内装まで終わったのに「食品衛生責任者がまだだから保健所の申請ができない」といった足止めを食らう。先に手をつけられるものは、早めに動いておくのが正解だ。
① 食品衛生責任者——一番先に、いつでも取れる
食品衛生責任者は、お店に最低一人いなければならない資格だ。各地で開かれる講習を一日受ければ取得できる。物件が決まっていなくても取れるので、開業を考え始めた段階で先にやっておくと、後の流れがスムーズになる。
講習は人気で予約が埋まりがちなので、「開業しよう」と思った時点で日程を押さえておくと、後で待たされずに済む。
② 飲食店営業許可——保健所へ
次が、保健所に出す飲食店営業許可だ。お酒や食べ物を出す以上、これは必須になる。
申請料は地域や形態で変わるが、おおむね16,000〜19,000円ほど。申請してから交付まで2〜3週間が目安だ。申請にあたっては、店の設備が保健所の基準(シンクの数、手洗い設備など)を満たしている必要があり、申請後に保健所の検査が入る。
ここで大事なのは、内装工事の前に保健所に相談しておくことだ。基準を満たさない作りにしてしまうと、工事のやり直しになる。図面の段階で確認しておくと無駄がない。
③ 風俗営業許可・1号——一番時間がかかる
そして最大の山が、風俗営業許可(1号営業・社交飲食店営業許可)だ。接待を伴う営業には必ずいる。申請先は所轄の警察署を通じて公安委員会になる。
この許可で覚えておきたいのは、とにかく時間がかかることだ。申請から許可まで、標準処理期間として55日ほどみておく必要がある。約2ヶ月だ。この間に店舗の構造検査なども行われる。
つまり、家賃は発生しているのに営業はできない期間が2ヶ月近く生まれる。開業資金を考えるときは、この「許可待ちの間の固定費」を見込んでおかないと、資金繰りが一気に苦しくなる。
風俗営業許可には大きく3つの要件がある。
- 人的要件 — 申請者などが、過去の処分歴など欠格事由に当たらないこと
- 場所的要件 — 保全対象施設(学校・病院など)の近くでないこと。地域によって営業できるエリアが決まっている
- 構造・設備的要件 — 客室の床面積、見通しを妨げる設備の制限、照度の基準など
特に場所的要件は、物件を決める前に確認すべき最重要ポイントだ。良い物件を見つけても、近くに保全対象施設があれば、その場所では許可が下りない。「契約してから許可が下りないと分かった」が一番痛い失敗なので、物件選びの段階で必ず確認しておきたい。
無許可営業のリスクは、想像以上に重い
「許可が下りる前にこっそり始める」は、絶対にやってはいけない。
風俗営業の無許可営業は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金という重い罰則がある。一度処分を受けると、その後の許可取得にも欠格事由として響く。目先の数週間を急いだ結果、業界で営業を続けられなくなる、ということもあり得る。許可待ちの期間は、つらくても正面から待つのが結局いちばん安全だ。
専門家に頼るかどうか
これらの手続き、特に風俗営業許可は、書類も多く要件も細かいので、行政書士に依頼するオーナーが多い。報酬はかかるが、許可が下りるかどうかの事前判断や、書類の不備による差し戻しを避けられることを考えると、自分の時間を内装やスタッフ集めに回せる分、頼む価値はある。
一方で、流れと要件を理解しておくこと自体は、依頼する場合でも無駄にならない。何が起きているか分かっていれば、専門家とのやり取りもスムーズになるし、スケジュールも自分で読めるようになる。
開業は、許可が下りて初めてスタートラインに立てる。その前段の数ヶ月をどう設計するかで、開店日が決まる。順番を間違えないことが、最初の一歩だと思う。
許可は、ただの手続きに見えて、開店日そのものを左右する。
何から手をつけるかが分かっていれば、待つべき時間も、慌てずに使えるようになる。
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