夏は、新しい子が入ってきやすい季節だ。
夏休みで時間ができた学生、短期で稼ぎたい人、生活が変わって仕事を探し始めた人。求人への反応が増え、体入の数も増える。採用に苦労している店ほど、夏は「人が採れた」とほっとする時期だと思う。
でも、毎年9月になると、同じことが起きる。夏に入った子が、気づくと何人もいなくなっている。辞めますと言って去る子もいれば、シフトの連絡が来なくなって、そのまま消える子もいる。
採用できたことと、続いてもらえることは、まったく別の話だ。そして、その分かれ目の多くは、入店してから最初の数週間にある。
夏採用が辞めやすいのには、理由がある
夏に入った新人が9月に辞めやすいのは、本人の根性の問題というより、構造的な理由がある。
ひとつは、夏が閑散期と重なること。8月はニッパチで店が暇だ。新人が入っても、お客さんが少なくて接客の機会が回ってこない。指名もつかないし、売上も立たない。「思ったより稼げない」「自分は向いていないのかも」という気持ちが、暇な店内で育ってしまう。本当は時期のせいなのに、自分のせいだと感じてしまう。
もうひとつは、夏に入った子の中に「夏だけのつもり」だった人が混ざること。学生の短期、つなぎのつもり。9月になって学校が始まったり、別の予定ができたりすると、そこで自然に離れていく。これはある程度しかたない部分もある。
問題は、本当は続けられたはずの子まで、この流れに巻き込まれて辞めてしまうことだ。
最初の1ヶ月で、続くかどうかが決まる
新人が辞めるかどうかは、最初の1ヶ月でだいたい決まる、と感じている店は多いと思う。
入ったばかりの頃は、誰でも不安だ。やり方が分からない、馴染めるか分からない、稼げるか分からない。この不安な時期に、ちゃんと見てもらえている、気にかけてもらえていると感じられるかどうか。それが、続ける気持ちを左右する。
放っておかれた新人は、暇な8月の店内で、ひとり不安を募らせる。誰も自分のことを見ていない、と感じる。逆に、暇な時期だからこそ手をかけてもらえた新人は、店に居場所を感じる。閑散期は、新人教育にとってはむしろチャンスでもある。お客さんが少ない分、先輩やスタッフが新人に時間を割ける。
「気にかけている」を、仕組みにする
とはいえ、「ちゃんと見てあげよう」という気持ちだけだと、忙しくなった途端に抜け落ちる。新人のケアは、人の善意ではなく、店の仕組みにしておいたほうがいい。
たとえば、新人が入って最初の数週間、誰が面倒を見るかを決めておく。何となく全員で、にすると、結局誰も見ていない状態になりやすい。担当を決めて、その人が「今日どうだった?」と一声かける。それだけでも、新人の感じ方は変わる。
それから、新人の様子を数字でも見ておくといい。出勤がぽつぽつ減っていないか。指名がゼロの状態が続いていないか。こういう兆しは、本人が「辞めます」と言うより前に、シフトや売上の記録に表れる。出勤の間隔が空き始めた新人は、気持ちが離れかけているサインのことが多い。
記録が残っていれば、「最近この子、出勤減ってるな」と早めに気づける。気づいて一声かけられれば、引き止められる子もいる。手遅れになってから「そういえば最近来てなかった」と気づくのが、いちばんもったいない。Luna Pos のような POS でシフトや売上が記録されていれば、新人の状態の変化を、感覚ではなく数字で拾えるようになる。
「稼げない時期」だと、正直に伝える
夏に入った新人がいちばん不安になるのは、稼げないことだ。だから、最初に正直に伝えておくのがいいと思う。
「8月は業界全体が暇な時期だから、今は数字が出にくい。でも、これは時期のせいで、あなたのせいじゃない。秋から年末にかけて、店は忙しくなる。今のうちに慣れておけば、そのとき動ける」。
こう伝えておくだけで、新人の受け止め方は変わる。暇なのが自分の実力のせいだと思い込んで辞めるのを、防げる。時期の波を知らない新人にとって、「今が底で、これから上がる」という見通しは、続けるための支えになる。
採用の次に、定着を設計する
夏に人が採れたら、それはスタートラインに立っただけだ。本当の勝負は、その子たちに9月以降も残ってもらえるかにある。
採用にはコストがかかっている。求人広告も、面接の時間も、教育の手間も。せっかくかけたそのコストが、9月の静かな離脱で消えていくのは、もったいない。
夏に採れた新人を、秋の戦力に変える。そのためにできることは、入店した最初の数週間に集中している。暇な8月を「新人を育てる時間」として使えるかどうか。秋に向けた仕込みは、お客さんへの仕込みだけでなく、新人への仕込みでもある。
夏に何人採れたか、ではなく、秋に何人残ったか。
採用の成否は、9月の出勤表を見て、ようやく分かる。
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