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キャバクラ経営改善2026-06-21

「過剰サービス」はなぜ生まれ、なぜなくならないのか

「もっとやってあげたい」は、善意から生まれる。

でもその「もっと」が積み重なると、あるとき限界になる。

キャストが「しんどい」と言い始める。でも「しんどい」の中身が何なのかが言語化できていなくて、ただ「辞めたい」という結論になってしまう。——過剰サービスが引き起こすこの構造は、業界内でそこまで正面から語られていない。

過剰サービスとは何か

まず定義から。

ここで言う「過剰サービス」は、「本来必要ではないのに、断れないからやっている接客行為」のことだ。

深夜に長文のLINEを返し続ける。お客さんの愚痴を何時間でも聞く。プライベートな相談に乗る。「ちょっとだけ送ってほしい」という要求に応え続ける。——これらは、お客さんにとって「ありがたいこと」かもしれない。でも全部、サービスの範囲として定義されていないものだ。

やっているのは「断れないから」であり「やりたいから」ではないことが多い。

断れない構造

なぜ断れないのか。

一番大きな理由は「断ると指名が取れなくなるかもしれない」という恐怖だ。

「あの子に頼んだら断られた」という体験は、お客さんにとっては記憶に残りやすい。逆に「あの子は何でも聞いてくれる」という評判は、指名につながる。だからキャストは、断るリスクを取らずに全部引き受ける方を選ぶ。

これは個人の問題ではなく、構造の問題だ。「断ったら指名を失うかもしれない」という環境が、断ることをコストにしている。

そして店側がこの構造に無自覚か、あるいは黙認している場合、過剰サービスは組織の慣行になる。新人も先輩を見て学んで、同じように全部引き受けるようになる。

過剰サービスのコスト

お客さんに喜ばれているのだから、問題ないのでは——という意見がある。

でも長い目で見ると、過剰サービスは店にとっても損だ。

キャストが消耗して辞める。 表向きは「別の理由」で辞めていても、根底に「なんでここまでやらなきゃいけないの」という疲弊が積み重なっていることがある。離職コストは前回書いた通り、決して小さくない。

お客さんの要求水準が上がり続ける。 今日100だったサービスが、来月は110、再来月は120を要求されるようになる。一度引き受けると、それが「最低ライン」になる。お客さんが悪いのではなく、そういう心理が働く。

新人が続かない。 先輩がやっていることを見て「自分もあそこまでやらなきゃいけないのか」と感じた新人は、早い段階でフェードアウトする。入り口で過剰なハードルを見せてしまっている。

どこに線を引くか

「過剰サービスをやめよう」という話をすると、「じゃあどこまでやればいいの?」という疑問が出る。

明確な答えはないが、判断の基準として使えるのは「翌日の自分がフラットな状態でいられるか」だ。

昨夜のことを引きずっていない。LINEのことを気にしていない。「また来てほしい」と素直に思える——そういう状態を保てているなら、まだいい。

「またあの人のLINEが来たか」「正直面倒だけど無視できない」「会いたくないけど来てしまった」——この状態になっていたら、何かを変えるサインだ。

店としてできること

個々のキャストに「断ることを学べ」と言うだけでは変わらない。

店としてできることは、「断っても指名を失わない環境」を作ることだ。

たとえば、深夜のLINEへの対応は「勤務時間外は返信不要」というルールを店が明示する。キャストが個人で断らなくて済む。「店のルールなので」という逃げ道ができる。

あるいは、明らかに行き過ぎたリクエストをお客さんにしているケースを、黒服や店長が介入して止める。キャストが一人で抱えなくていい状況を作る。

過剰サービスは、個人の問題に見せかけた、店の仕組みの問題だ。


「もっとやれ」が売上を上げる、というのは短期的には正しいかもしれない。

でも「やれなくなった人が辞める」コストを含めると、長期的には正しくない。どこかで収支が合わなくなる。

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