選挙の話から始めていい?
政治家の好感度ランキングと、実際の得票数はまったく一致しない。テレビで見て「いい人そうだな」と思われている政治家が、選挙になると票が集まらない。逆に「あの人ちょっと苦手」と言われるタイプが、圧倒的な得票数で当選する。
なぜか。
好感度は「嫌われない力」で作られる。得票は「この人じゃなきゃダメだ」という力で作られる。この2つはまったく別の能力だ。
で、これ、キャストの世界でもそっくりそのまま起きている。
「いい子だよね」で終わるキャスト
店にいると、こういう子がいる。
誰とでも仲がいい。お客さんにもスタッフにもキャストにも好かれている。悪口を言われているのを聞いたことがない。ヘルプに入っても空気を壊さない。テーブルの雰囲気は穏やかで、お客さんも楽しそうにしている。
でも、指名が入らない。
正確に言うと、場内指名はそこそこある。でも本指名に繋がらない。「いい子だったな」でお客さんの記憶が終わっている。次に来たとき、別の子を指名する。あるいは、フリーで来てまた「いい子だったな」を繰り返す。
本人もわかっている。頑張っているのに、なぜか指名が積み上がらない。嫌われてはいない。でも、選ばれてもいない。
一方で、こういう子もいる。
苦手な人がいるキャストの常連事情
正直、万人受けはしない。ちょっとクセがある。話し方が独特だったり、ノリが合わない人には合わない。お客さんの中にも「あの子は苦手」という人がいる。
でも、本指名がめちゃくちゃ強い。
毎週同じお客さんが来る。そのお客さんたちは他のキャストには目もくれない。「あの子がいるからこの店に来ている」と言い切る。同伴も多い。延長も長い。単価も高い。
これは偶然じゃない。
「苦手な人がいる」ということは、裏を返すと「好きな人にとっては替えがきかない」ということだ。無難にまとまった接客では生まれない「この子だけの空気」がある。その空気に合う人にとっては、唯一無二の存在になる。合わない人にはノイズでも、ハマる人には中毒になる。
考えてみれば、あなた自身が何かのファンになったとき——好きな芸能人でも、好きなYouTuberでも——「みんなに好かれている人」を推しているだろうか。むしろ、ちょっとクセがあって、好き嫌いが分かれるくらいの人に熱くなっていないだろうか。
万人に好かれる子は、誰にとっても「2番目」になりやすい。「悪くないけど、わざわざ指名料を払って会いに行くほどじゃない」——そこに留まってしまう。
嫌われることを恐れて角を丸くした結果、刺さる面がなくなる。ナイフの刃を全部削って、安全だけど何も切れない道具になってしまう。
選挙と指名の共通構造
選挙に戻る。
政治家が票を集めるとき、「全国民に好かれる」必要はない。自分の選挙区で、投票に行ってくれる人の心をつかめばいい。100万人に薄く好かれるより、3万人に「この人しかいない」と思われる方が当選する。
キャストの指名も同じ構造をしている。
店に来る全てのお客さんに好かれる必要はない。あなたのテーブルについたお客さんの中で、「この子にまた会いたい」と思う人が月に3〜4人いれば、指名は安定する。フォロワー1万人より常連3人の方が稼げるのと同じ理屈だ。
全員に好かれようとすると、全員に対して当たり障りのない接客になる。それは「嫌われないための接客」であって、「選ばれるための接客」ではない。
尖ることのリスクと、尖らないことのリスク
ここで正直に書く。尖ることにはリスクがある。
合わないお客さんに「なんだあの子」と思われるかもしれない。黒服から「もう少し万人受けする接客にしたら?」と言われるかもしれない。最初のうちは場内指名が減るかもしれない。
怖い。それはわかる。
でも、尖らないことにもリスクがある。こっちのリスクは見えにくいから厄介だ。
尖らない接客を3年続けると何が起きるか。「いい子なんだけどね」と言われ続けて、でも指名は横ばい。新しいお客さんが来ても本指名に繋がらない。後から入ってきた、もっと若い、もっと愛想のいい子に場内指名を取られていく。
結局、「嫌われない」だけでは替えがきく存在になる。替えがきく存在は、年齢やフレッシュさで勝負するしかなくなる。それは長く続けられる戦い方じゃない。
尖ることのリスクは「短期的に一部のお客さんに嫌われる」。尖らないことのリスクは「長期的に誰にとっても特別じゃなくなる」。
天秤にかけたとき、どっちが重いかは——考えてみてほしい。
「尖る」って、別にキャラを作ることじゃない
ここで誤解してほしくないのは、「尖る=派手になれ」「キャラを作れ」という話じゃないこと。
尖るというのは、自分が自然にできることを、もっと深くやること。
聞き上手なら、とことん聞く。他の子が5分で話題を変えるところを、30分でも同じ話に付き合う。お客さんが「こんなに聞いてもらえたの初めてだ」と思うくらい。
笑わせるのが得意なら、もっと攻めていい。ちょっと危ないラインの冗談も、あなたが言うから面白い。無難なトークに逃げない。
お酒に詳しいなら、その知識を全開にする。「この子に聞けば間違いない」という専門性を持っている子を、わざわざ指名しに来る人は確実にいる。
大事なのは「自分が無理なくできること」を、中途半端にやらないこと。70%で止めている自分の持ち味を、100%まで出す。それだけで「この子じゃなきゃダメだ」と思うお客さんが出てくる。
70%でまとめると、万人に「いいね」と言われる。100%まで出すと、一部の人に「最高」と言われて、一部の人に「ちょっと苦手」と言われる。でも「最高」と言ってくれる人が指名してくれる。
自分の「好かれ方」の型を知る
ここまで読んで「じゃあ何を尖らせればいいの?」と思うかもしれない。
答えを言うつもりはない。なぜなら、それは自分にしかわからないから。
ただ、ヒントはある。自分がどんな風にお客さんに好かれているかを観察してみてほしい。
場内指名が多いなら、初対面の空気を作るのがうまい。その力をもっと研ぎ澄ませるのか、それともリピート率を上げる方向に伸ばすのか。
「落ち着くから来る」と言われるなら、あなたの武器は「安心感」。派手さで勝負する必要はない。
「おもしろいから来る」と言われるなら、それをもっと研ぎ澄ませていい。
同伴が多いなら、お店の外でも「会いたい」と思われている。それは接客力だけじゃなく、人としての魅力だ。
お客さんがくれる言葉をよく思い出してみてほしい。「楽しかった」なのか「癒された」なのか「めちゃくちゃ笑った」なのか。その言葉の中に、あなたの型がある。
自分の好かれ方を知ると、伸ばすべき方向が見える。そして「万人に好かれなくていい」と思えるようになる。全員に好かれようとするストレスから解放されて、自分が得意なことだけに集中できる。それは、この仕事を長く楽しく続けるための土台にもなる。
まとめ
好感度と集客力は別物だ。全員にいい顔をしても、「わざわざ指名して会いに行きたい」存在にはなれない。
尖ることは怖い。合わない人に嫌われるリスクがある。でも、尖らないことにもリスクはある。誰にとっても2番手のまま、替えのきく存在になっていくリスク。
自分の持ち味を中途半端に出すのをやめて、100%出す。それだけで「この子じゃなきゃダメだ」と言ってくれるお客さんが現れる。
全員に好かれなくていい。あなたを「最高だ」と思ってくれる人に、ちゃんと届けばいい。
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