売上は、先月とそう変わらない。
でも、なんとなく店の空気が違う。開店直後が静かで、遅い時間に客が固まる。忙しさの山がずれている気がするけれど、月末に出てくる総額は横ばい。だから特に問題として扱われないまま、次の月に入っていく。
こういうとき、中身が入れ替わっていることがあります。たとえば同伴だけが減って、その分をフリー客や遅い時間の来店が埋めている。総額が同じなら、変化はグラフに出てきません。
総額は、いくつもの違う動きを隠す
売上という数字は、性質の違うものを足し合わせた結果です。
同伴、指名、フリー、ボトルの動き、来店組数、単価。これらは別々の理由で増えたり減ったりします。ひとつが落ちて、別のひとつが伸びれば、合計は動きません。動かないから、気づかない。
厄介なのは、落ちた側と伸びた側で、店にとっての意味がまったく違うことです。
同伴は、キャストが店の外で関係を維持できている証拠です。連絡が取れていて、時間を合わせてもらえる関係が続いている。一方、遅い時間のフリー客は、その日たまたま近くにいた人かもしれない。同じ金額でも、次につながる度合いが違います。
同伴が減ってフリーが増えた月は、金額が同じでも、来月以降の足腰は弱くなっています。
減り方は、たいていゆっくり
同伴が急にゼロになることは、まずありません。
週3回あったものが2回になり、しばらくして週1回になる。1か月単位で見ると小さな差なので、「今月はたまたま」で説明がついてしまう。これが3か月続くと、それはもう「たまたま」ではないのですが、月ごとに見ている限り、その転換点は見えません。
しかも、減っている理由はキャストによって違います。連絡が続かなくなった子、指名客そのものが減った子、体調や生活の都合で早い時間に出られなくなった子。ひとまとめに「同伴が減った」と扱うと、どれも解決しません。
分けて見るだけで、打ち手が変わる
必要なのは、複雑な分析ではないと思っています。売上を、性質ごとに分けて並べるだけで十分なことが多い。
同伴の件数を月ごとに。指名の件数を月ごとに。キャスト別に。この程度でも、「誰の、何が、いつから変わったか」はかなり見えてきます。
Luna Pos のような POS で会計を入力していれば、同伴や指名は会計データの中に既に記録されています。改めて集計を作らなくても、分けて見る形にすれば、変化はそこにあります。手書きの伝票を後から数えるのは大変ですが、記録されているものを並べ替えるだけなら現実的です。
そして、キャスト別に見えると、声のかけ方が変わります。全体に向けて「同伴を増やそう」と言っても、誰も自分のこととは受け取りません。「先月から同伴が減っているけど、何かあった?」なら、具体的な話になります。
数字が見えると、責める話になりやすい
ただ、ここには注意が要ります。
個別の数字が見えるようになると、それを詰める材料に使ってしまいがちです。「先月より落ちている」と本人に突きつける。短期的には少し戻るかもしれませんが、続きません。数字を見られること自体が嫌になると、報告が遅れたり、話しかけづらくなったりします。
数字は、原因を探すための入り口として使うほうが機能します。減っているという事実は出発点で、そこから「何が起きているか」を聞く。体調なのか、客側の事情なのか、生活が変わったのか。事情がわかれば、シフトの調整や声かけのタイミングなど、店側でできることが見つかることもあります。
秋は、差が開き始める時期
9月から10月にかけて、来店の理由が増えていきます。飲み会が戻り、接待も動き出す。このとき、同伴の関係が維持できているキャストと、途切れているキャストの差が、はっきり出ます。
夏の間に連絡が細くなったまま秋に入ると、繁忙期の波に乗れません。逆に、閑散期でも関係を切らさなかった子は、10月以降に一気に伸びます。この差は、忙しくなってから埋めるのが難しい。
だから今、見ておく価値があります。総額ではなく、中身を分けて。
売上が横ばいの月ほど、何も起きていないように見えて、中で入れ替わりが起きていることがあります。