「ドレス代って経費になるんですか」とよく聞かれる。
答えは「なる」のだけど、正確に言うと「仕事のために使った分はなる」になる。この「仕事のために」という部分が、経費の話をややこしくしている。
キャストとして働いていると、お店から給料をもらっているように感じても、税金の世界では多くの場合「個人事業主」として扱われる。報酬から自分で経費を引いて、残った所得に税金がかかる。つまり、経費を正しく計上できるかどうかが、手元に残るお金に直接効いてくる。
ここでは、何が経費になるのかを、できるだけ素人にも分かる言葉で整理してみたい。税理士の正式な助言の代わりにはならないけれど、考え方の地図くらいにはなると思う。
経費の基本は「仕事のために使ったか」
経費かどうかの判断基準は、シンプルに言えばひとつだ。それを「仕事のために」使ったかどうか。
ドレスは、お店に出るために着る。だから経費になる。同じ服でも、完全にプライベートで着るために買ったものは経費にならない。この「仕事のため」という線引きがすべての土台になる。
問題は、現実にはきれいに分けられないものが多いことだ。スマホは営業LINEにも使うけど、友達との連絡にも使う。美容院も、出勤前のヘアセットなら仕事だけど、休みの日のカットは微妙だ。
こういう「仕事にもプライベートにも使うもの」は、全額ではなく「仕事で使っている割合」だけを経費にする。これを家事按分という。スマホ代の6割が仕事なら、6割を経費にする、という考え方だ。割合は自分で合理的に決めて、説明できるようにしておく。
キャストの経費になりやすいもの
実際に経費として認められやすいものを挙げてみる。
- ドレス・衣装代 — 出勤のために着るもの。代表的な経費
- 美容院・ヘアセット代 — 出勤前のセットなど、仕事に直結する分
- メイク・コスメ代 — 接客のための分。プライベート分とは按分する
- ネイル・エステ代 — 仕事で見られる部分にかける分
- タクシー代・交通費 — 出勤や帰宅の移動。深夜の帰宅タクシーは認められやすい
- 携帯・通信費 — 営業連絡に使う分を按分して
- 接待交際費 — お客さんとの同伴やアフターでの自分の負担分など
- 源氏名の名刺 — 広告宣伝のための費用
ポイントは、すべてに「なぜこれが仕事のためなのか」を自分で説明できること。ドレスは出勤のため、タクシーは深夜の帰宅手段、というように理由がはっきりしているものは強い。
領収書とメモが、最後にものを言う
経費で一番つまずきやすいのが、記録だ。
「これ経費になるはず」と思っていても、いくら使ったかの証拠がなければ計上しづらい。だから領収書はとっておく。レシートでもいい。
ただ、電車やバスのように領収書が出ないものもある。その場合は「いつ・どこからどこへ・いくら」を出金伝票やメモ、スマホのメモアプリでもいいので残しておく。後から見て説明できる記録があれば、それが裏付けになる。
地味だけど、日々の記録の有無が、確定申告のときの計上できる経費の量を決める。一年分をまとめてやろうとすると必ず抜け落ちるので、使ったときにその場で残す習慣がいちばん効く。
なお、お店から受け取る報酬の明細や、日々の売上・指名の記録も、収入を正確に申告するうえで大事になる。Luna Pos のような POS を使っているお店なら、自分の売上や指名の履歴がデータとして残るので、後から「いくら稼いだか」を確認しやすい。記憶や手書きのノートよりも、こうした記録は申告のときの心強い味方になる。
「バレてない」は、いつまでも続かない
確定申告について、「今はやっていないけど大丈夫」という声を聞くことがある。
気持ちは分かる。でも、お金の流れは年々追いやすくなっている。報酬の支払い記録や口座の動きから、申告していない所得が見えてしまうことは十分にある。後からまとめて指摘されると、本来払う税金に加えてペナルティが乗る。先に正しくやっておくほうが、結果的に安く済むことが多い。
逆に言えば、きちんと経費を計上して申告すれば、払う税金は思ったより抑えられることもある。経費を引けるのは、申告する人の正当な権利だ。やらない理由で損をするのは、もったいない。
不安なら、税理士に頼るのも一つ
ここまで書いておいてなんだけど、自分一人で全部やるのが不安なら、税理士に相談するという選択肢もある。
費用はかかる。でも、青色申告で受けられる控除や、見落としていた経費を拾ってもらえることを考えると、頼んだ費用以上に手元に残るお金が増えるケースは珍しくない。特に収入が増えてきた人ほど、専門家に任せたほうが結果的に得になりやすい。
「税理士なんて自分には大げさ」と思うかもしれないけれど、確定申告の時期だけスポットで相談できる事務所もある。完璧に自分でやろうとして毎年憂鬱になるより、分かる人に任せて本業に集中する、というのも十分に賢いやり方だと思う。
経費の話は、難しそうに見えて、根っこは「仕事のために使ったか」のひとつだけだ。
その一点を軸に、記録を残して、不安なら人に頼る。それだけで、手元に残るお金はきっと変わってくる。
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